MORAL COLLAPSE "Divine Prosthetics"

MORAL COLLAPSE "Divine Prosthetics"

販売価格: 1,900(税込)

数量:

商品詳細

オールドスクールなデス・メタルを基盤にしつつも、アンビエント・ノイズ、不協和音、フリー・インプロヴィゼーション……アヴァンギャルドで実験的な試みを大胆に導入し始めたMORAL COLLAPSEの2ndアルバム。

今回は、『300(スリーハンドレッド)』や『The Northman(ノースマン 導かれし復讐者)』に代表される壮大な時代劇からインスパイアされており、“Divine Prosthetics(神の装具)”なるものが男たちを戦いに駆り立てる。“NORdescendants”と呼ばれ、ほぼ不死身の肉体を手に入れたその男たちが神話に登場する帝国を倒しながら領土を拡大していく物語。ドラゴンや魔法などのファンタジー要素はそこには含まれないが、ごく普通の人々を超人に変貌させてしまう神秘的な力の存在を描いている。

MORAL COLLAPSEはインドはベンガルールを拠点に活動してきたArun Natarajan(ECCENTRIC PENDULUM、元EXTINCT REFLECITONS)が、同郷のSudarshan Mankad(TACHYON MEDULA、INFAMY、HUMANBROTH)、さらには世界のエクストリーム・メタル界でその名を知らぬ者はいない技巧派ドラマーHannes Grossmann(ALKALOID、ETERNITY’S END、元OBSCURA、元NECROPHAGIST、元HATE ETERNAL)を誘い、彼がその楽曲の価値を見出して承諾。これにて2020年に核となるラインアップが完成し、Arun Natarajanが学生時代に組んだ人生初のバンド、MORAL COLLAPSEの名を再び冠して本プロジェクトが始動することとなった。

近年、Arun Natarajanはプログレッシヴな要素を押し出したECCENTRIC PENDULUMとしての活動が知られているが、こちらのMORAL COLLAPSEは、MORBID ANGEL、HATE ETERNAL、CARCASS、そこにGORGUTSやPESTILENCEのような捻りを加えたオールドスクールなデス・メタルを目標にしているという。

1stアルバム『Moral Collapse』(2021年)は、多少アヴァンギャルドな雰囲気を持ったテクニカルなオールドスクール・デス・メタルといった風情だった。ところが今回の2ndアルバム『Divine Prosthetics』(2023年)では実験的要素がさらに拡大。「Precise Incision」「Calamitous」「Divine Prosthetics I」は前作からの流れを引き継ぐテクニカルなオールドスクール・デス・メタルではあるものの、「Disintegration」「NORDescendant」は完全に不穏なアンビエント・ノイズ。「Divine Prosthetics II」にいたっては前半1/3ほどはギター、ベース、ドラム、サックス、ヴァイオリンが入り乱れながら衝動的に鳴っているが、程なくして楽曲の中心となるのはサックスとヴァイオリン、ノイズのゆらめき。そのアンビエンスは次第にすべてを残響にして深い霧の彼方へと消し去ってしまうかのよう。

このように今作は6曲中3曲がメタル、残りの3曲がアンビエント・ノイズ/フリー・インプロヴィゼーションという構成になっている。アルバムの半分がメタルとは異なる楽曲であることから、純粋にエクストリーム・メタルのみを求めると、その存在意義に疑問を呈することになるかもしれない。しかも曲によっては中心メンバーよりゲスト・ミュージシャンの役割が大きく、同一バンドとは思えないほど解離したようにも受け取れるだろう。

解離……それはまるで映画『サイコ』のノーマン・ベイツのごとき豹変ぶりと言えるだろうか。確かにそれくらい別人格のように異なっているが、これは決して解離性同一性障害のようなものではない。では、己の善悪を分離させようと試みて二重生活を送った『ジキル博士とハイド氏』のようなものか。それも違うが、結果としてジキル博士は「不調和な混合体」だったという。オールドスクール・デスメタルのジキル博士が内に潜むハイド氏の純粋なるアンビエンス/フリー・インプロヴィゼーション/ノイズを解き放った瞬間に味わった、その悦楽に酷似したものがあるのかもしれない。そしてその鮮烈な差異が双方を引き立て合い本作の真なるヘヴィさを強調することになる。

Bill Laswellに触発され、アヴァンギャルドな作品を多くリリースするレーベル・オーナーとしての顔を持つArun Natarajanはフリー・インプロヴィゼーションの世界にも造詣が深い。表面をなぞっただけの“ふり”で済ますはずがないのだ。異なるとされているものの存在を肯定し、それぞれ独自の振動をさせながらMORAL COLLAPSEの鼓動へと変換する。森羅万象が個別の存在(振動)でありながらも互いに繋がり一つであるように。

専門ジャンルは異なるとしても、ミュージシャンとしての才能を信じて無意識で互いのヴァイヴレーションを感じ合いながらの自由に構築されていくスリリングな生々しさ。今作の最後を飾る「Divine Prosthetics II」がそれを物語っている。

テクニカルなオールドスクール・デスメタラー(ジキル博士)はアンビエント・ノイズ/フリー・インプロヴィゼーション(ハイド氏)というもう一つの存在を1stアルバム『Moral Collapse』で垣間見せ、2ndアルバム『Divine Prosthetics』ではその内在する自己を二分させた。けれどもそれだけに終わらず、最後の曲「Divine Prosthetics II」で「不調和な混合体」から複雑さが共鳴した「調和する混合体」へ移行する、その過程と瞬間をとらえたアルバムではないか。

我々は枠組みを作ることでその範囲内に秩序じみたものを感じて安堵しがちだ。もちろん彼らにだってある程度の枠はあるだろうが、その枠組みを拡げて未知の領域に手を伸ばそうとしているのは明白。そしてこの行いは「帝国を倒しながら領土を拡大していく」という今作の物語とも重なってくる。

ゆえに、もはや今作の場所に彼らはいない。無意識、自由意志、魂レベルとも言えるほどの感覚で歩む彼らの行先をリスナーが干渉することなど無用。今後、この実験的な方向性をさらに突き詰めてフリー・インプロヴィゼーションで埋め尽くされるかもしれなければ、インダストリアルとノイズの洪水になるやもしれない。けれど、たとえそうだとしても、MORAL COLLAPSEはMORAL COLLAPSEなのである。これはまさに真我への道。

Arun Natarajanはとんでもない化け物を生み出したのかもしれない。


今回はギター、ベース、ヴォーカルを首謀者であるArun Natarajanが手がけ、セッション・ドラマーのHannes Grossmannがアルバムの主だったミックスとマスターを担当。

さらにゲスト枠として、Sudarshan Mankad(INFAMY)が「Precise Incision」でギター・ソロ。Moiz Mustafa(GODLESS)が「Calamitous」でギター・ソロ。Bobby Koelble(元DEATH、LEVIATHAN PROJECT)が「Divine Prosthetics」でギター・ソロ。Sandesh Nagaraj(元MYNDSNARE、元EXTINCT REFLECTIONS)がイントロの「Disintegration」を制作。サクソフォニストJulius Gabrielは「Divine Prosthetics II」で多次元的即興を。ヴァイオリニストのMia Zabelkaは「NORDescandant」と「Divine Prosthetics II」でアブストラクトな退廃美空間を演出。


2ndアルバム
2023年発表

収録曲
1.Disintegration 02:33
2.Precise Incision 04:11
3.Calamitous 04:44
4.NORDescendant 06:15
5.Divine Prosthetics I 04:25
6.Divine Prosthetics II 09:57

サンプル動画は「Precise Incision」のリリック・ビデオ

Facebookコメント