KIMAERA "Solitary Impact"

KIMAERA "Solitary Impact"

販売価格: 1,500(税込)

商品詳細

新たに女性ヴァイオリニストを迎えたレバノンのAtmospheric Doom/Death Metalバンド、KIMAERA。長尺の曲にドラマ性のある展開と中東バンドならではメロディを持ち込むも、終始重くのしかかるような暗さが支配するKIMAERA独自の美学を創造しつつある。

2010年の2nd。

収録曲
01.Bloody Tourniquet 8:02
02.A Breath Of Despair 5:20
03.A Silent Surrender 4:52
04.Solitary Impact 7:32
05.Holy Grief 7:05
06.In The Shade Of Nephilim 5:37
07.All That I Am 6:30
08.The Taste Of Treason 6:49
09.Of Wine And Woe 2:37
10.The Garden Tomb 4:27

以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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今年は珍しく全国的に入梅が早まったようで、じめじめとした欝陶しい日が続いているが、毎年経験する事とはいえ、湿気を好む人は少ないはずだ。こうなると、カラッと陽気なロックで気分を高揚させて日々を乗り切りたいところ。しかしながら、失恋したときに陽気な曲を聴いても心の中のチグハグ感は増すばかり。ならば、ここは同質の原理を利用して、梅雨空のような暗く湿っぽい質感の音楽に浸りきってしまえば良いのではないか。

そんな今回は、レバノンはベイルートに活動拠点を置く、アトモスフェリック・ドゥーム/デス・メタル・バンド、KIMAERAを紹介したい。

バンドは、Jean-Pierre Haddad(vocal/guitar)を中心にして2000年に結成される。ごく初期の段階ではカヴァー・バンドであり、バンド名もCHIMERAと名乗っていた。しかし、オリジナル曲を作るようになり、国際的な活動目標を掲げてからは、バンド名をKIMAERAへと改める。

最初に発表した作品は2004年の『God’s Wrath』というシングルだったが、これがレバノン国内のみならず、あらゆる国で話題となったため、ロシアのStygian Crypt Productionsの目に留まり、アルバムの契約を結ぶこととなった。

それから2年の歳月をかけて2006年にデビュー・アルバムとなる『Ebony Veiled』を発表。 Jean-Pierre Haddadのドスの効いたヴォーカルと、幽玄な女性ヴォーカリストSabineの対比。重苦しいリフとキーボードが生み出すゴシック調の美の空間が混在し、そのタイトルが示すように、徐々に闇に包まれていくような錯覚に陥る作品だった。

そんな『Ebony Veiled』は目ざといメタル・マニアの間では高く評価されていたのにも関わらず、思いの外次作のリリースが遅れ、ファンの気を揉むところとなったが、2010年になってようやくセカンド・アルバム『Solitary Impact』の登場となる。

いざ蓋を開けてみると、半分のメンバーが入れ替わっており、Sabinaの名前もなかった。しかしながら、バンドは専任の女性ヴォーカルを入れることはせず、ゲスト扱いでいくつかのパートに女性ヴォーカルを配し、今回から新たにクラシックはもちろんのこと、MY DYING BRIDEやANATHEMAを愛するMiliaという女性ヴァイオリニストを加入させている。

『Solitary Impact』では、オリエンタルな楽器とメロディの導入も目を引く要素の一つになっているのは確かではあるのだが、何よりも楽曲の質感自体の重みが増し、一気にズドンと暗闇に落とされる雰囲気が素晴らしい。湿ったコンクリートの壁のようなギター・リフ、哀調を帯びたキーボード、湿度の高い陰気な風を運ぶヴァイオリンの旋律。それらが渾然一体となって襲いかかり、 聴き手の心を弄ぶ。荒涼とした空間に取り残された孤独が生み出す、 寂寥、 諦観、焦燥感。

今作で、レバノン出身のメタル・バンドとしての印象を決定づけたKIMAERAは、アルバム・リリース後、ACCEPT、ANNIHILATOR、MANOWAR、BEHEMOTH等が参加したチェコのMASTERS OF ROCKに招待され、今年はトルコで行われる大規模なUNIROCK OPEN AIR FESTIVALへの参加も決定。世界への足がかりを着実に掴んでいる。

レバノンにもいくつかのメタル・バンドが存在しているが、きちんと活動を続けることができるバンドは少なく、かつ、国際的な視点を合わせ持つ このKIMAERAのようなバンドは稀有である。Jean-Pierre Haddadの話を参考にすると、順調にことが運べば、来年辺りに新作が発表されるのではないかと私は想像しているのだが、これにより彼らがレバノン発のメタル・バンドとして国際的な評価を受ける日は近いと思う。

梅雨時期の曇天の日に、湿度の高いアトモスフェリック・ドゥーム/デス・メタル・バンド、KIMAERAで、どっぷりと鬱々たる世界に浸るのもまた一興だと思うが、いかがだろう。
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