FUSEBOXX "Animated"

FUSEBOXX "Animated"

販売価格: 1,800(税込)

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商品詳細

21世紀のPinoy Progを支えるFuseboxx、待望のセカンド・アルバム。

2011年リリース。

収録曲
01.Overture 4:39
02.Animated 6:00
03.Reflections 6:11
04.Pagbalik 4:20
05.Columns 5:47
06.No Glory 7:41
07.Uyayi 7:36
08.Twilight 4:19
09.Hibang 5:13
10.Araw 5:06

以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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世界の政治や経済、自然災害等の危険性と不安定さに翻弄されて疲れてしまっている方も多いと思われる。何を隠そう、私のか弱いくて繊細な心もズタボロである。だからというわけではないが、しばらく都市部を遠く離れて山林の中に身を置いてみた。

燃えるような緑、忙しなく働き続ける蟻、力強く飛び回る蜂、我が物顔で樹液を貪るカブトムシ。やはり夏。かくして私は、しばらく忘れていた生命の持つ躍動感を間近に見て、生きる活力を再び得ることができたのである。

というわけで、今回は『Animated』と題されたアルバムを今年発表したフィリピンのシンフォ系プログレ、FUSEBOXXをご紹介しましょう。

FUSEBOXXの母体となるバンドが結成されたのは2001年。Eric Tubon(シンセサイザー)を中心として、Paolo Cabalquinto(ギター)、Herson Fremista(ドラム)という3人組のエクスペリメンタル・グループを結成。この時点での音楽性はヘヴィでテクニカルになったTHE DOORSのようなものだったらしい。それが2005年にデビュー・アルバム『fuseboxx』を発表する頃にはシンフォ系のプログレッシヴ・ロック/メタル・バンドへと変貌を遂げ、メンバーも Eric Tubon(シンセサイザー)、Abby Clutario(女性ヴォーカル)、Albert Montinola(ギター)、Rodney Vidanes(ベース)、 Herson Fremista(ドラム)という布陣になっていた。

私も当時、このアルバムを手にした時、「ついにフィリピンから本格的なプログレが出てきたか!」と興奮したが、現地のロック・ファン達にも驚きを持って迎えられただろうことは想像に難くない。

確かにフィリピンのロック史の凄さは、ここ日本でもD’SWOONERSの活躍によって、60年代から多くの人々に認知されていることと思う。しかし、プログレ系のバンドというと、そういった感性を持ち合わせたバンドは存在してはいたが、きちんと、”プログレッシヴ・ロック/メタル”という名のもとに作品を発表したバンドとなると、明確には思い浮かばない。これに関してはメンバーも『fuseboxx』が、フィリピン初のプログレ作品かもしれない、と発言している。

このような観点からも重要なバンドであり、また、楽曲のレベルの高さや、デビュー・アルバムで25分という組曲を披露するという衝撃を与え、国内外の聴き手を驚かせたFUSEBOXXであったが、度重なるメンバー・チェンジに見舞われ、2枚目のアルバムを発表するまで6年近い歳月を要してしまう。

ようやく『Animated』が発表されたのは今年の6月。長年待たされたアルバムの蓋を開けてみると、 Eric Tubon(シンセサイザー)、Abby Clutario(女性ヴォーカル/キーボード/チャップマン・スティック)、Mico Ong(ギター)、Lester Banzuelo(ドラム)というベースレスの4人編成になっていた。

どうやら、 Abby Clutarioが チャップマン・スティックを入手した時期とベーシストが脱退した時期が関係して偶然、このような編成に至ったようだが、これが功を奏してこれまでにないユニークで斬新な要素をバンドに加えることとなった。

今回のアルバムは、全曲から一部分のフレーズを少しづつ取り上げてコーラス・ワークで構成された‘Overture’から静かに始まって、テクニカルでエネルギッシュなインストゥルメンタルのタイトル・トラック‘Aminated’へと流れていく。FUSEBOXXのいうところのプログレッシヴ音楽とは、活気にあふれて躍動感のあるもだということだが、まさしくそういう気持ちが現れた曲であり、アルバムの導入部分としてよく出来ると思う。これを起点として、ダイナミックかつ繊細なシンフォ系の プログレッシヴ・ロック/メタルが展開されていくが、ポップなメロディから憂いのあるメロディ、そして時にはシュールな歌詞と共にジャジーな展開を見せたりと、柔軟さを持ち合わせながら最後には希望に満ちたメロディを子供のコーラスでアルバムを締めくくる。メンバーの技量は確かで、タイトでソリッドな演奏にもかかわらず温かみを感じる音を出す、しみじみと良い作品だ。

歌詞は英語とタガログの両方で歌われているが、それはフィリピンの公用語であるという理由と、母国のタガログの美しさに対する誇り。さらには、RUSH、YES、UK、DREAM THEATERといったところから、Orginal Pilipino Musicという母国の音楽にも影響を受けたのが理由だという。歌うのはAbby Clutarioだが、彼女はプロフェッショナルなコーラス・グループ出身ということもあり、元から歌の上手い人ではあったが、さらなる成熟をみせ、タガログの曲では艶と気品すら漂わせている。今回のアルバムからは憧憬を歌った‘Pagbalik‘という曲で幻想的なビデオを制作しているので、それをご覧頂ければお分かりになるだろう。

バンドは地道な努力を重ね、ここ数年で楽曲には磨きをかけ、レコーディング技術も大幅に進歩させた。 しかしながら、彼らの国ではこの手のサウンドを理解できるエンジニア、プロデュースできる人物が乏しいようで、FUSEBOXXはレーベルに所属することなく、すべてをインディペンデントで行っている状態だ。

正直な話、数多のロック・バンドが存在するフィリピンにおいても、プログレッシブな音楽でバンド活動を行うことは、音楽シーンや経済的に見てもかなり苦しく、才能があったとしてもミュージシャンは続けていかれないか、もしくは選択すらしないかもしれない。そんな状況の中、FUSEBOXXは約10年に渡って生き残り、さらにはプログレッシヴな音楽を広めるためにコミュニティまで立ち上げて尽力している。

我々ロック・ファンがひとりでも多く彼らに目を向けることは、つまりそれ自体がフィリピンのプログレッシブ音楽の復興へと繋がっていく。FUSEBOXXはそれだけの価値がある存在なのである。『Animated』は2011年に聴いておきたい重要なアルバムだ。

Mabuhay FUSEBOXX Prog On!
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