CRYSTAL DANCER~舞璃~ “Crystal Gravity”

CRYSTAL DANCER~舞璃~ “Crystal Gravity”

販売価格: 1,800(税込)

商品詳細

踊れるトランス・メタルを提示したファースト・アルバムから4年半の歳月を経てたどり着いたのは、踊れる曲はそのままに、ちょっと背伸びした大人っぽい色気のある歌からアイドルっぽい媚びたキュート・メロディを歌う可愛らしい女性ヴォーカルに、古箏や中国笛を導入したオリエンタル要素とJ-POPからの影響を台湾風に消化したアジアン・ポップ色を全面に押し出しつつもザクザク刻むギターのダンサブルなアジアン・ポップ・メタル。
摩訶不思議な調和とキャッチーさに頑固なメタル親爺もこっそり愛聴しちゃうぜ!

2012年リリース。
セカンド・フル・アルバム。

収録曲
01.Fighting 4:41
02.生人勿近 3:11
03.Shinobi 3:26
04. 光 4:19
05. 離殤 4:27
06. 偏執 4:04
07.魔幻電力 4:22
08.New Start 3:03


以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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まだ残暑厳しいとはいえ、あれだけはしゃいだ夏も過ぎてゆこうとしている。少しばかりしんみりとなりそうな気分を払拭しようと、からっと明るいLAメタル系やXE-NONE等のダンス・メタルを大音量でかけて腰をくねらせてはみたものの、空しい気持ちは増すばかり。過ぎ行くものに必死になってしがみつこうとするのは情けないものだ。しかし今回、ダンス・ビートにヘヴィなギターという組み合わせの気持ち良さを再確認。これが思いのほか中毒性があり、ハマるといろいろ追求したくなるのがマニア。世界を見渡せば、それ系のバンドはチラホラ見つかるだろうけれども、どうせ日本人ならアジア圏のバンドで体を揺らしてみたい。

今回ご紹介するのは、台湾のCRYSTAL DANCER。彼らは台湾でも珍しい、メタルなギターを導入したエレクトロでダンサブルな女性ヴォーカルのバンドとして知られていた。しかし、今年発表した新作『Crystal Gravity』では、ダンサブルな部分は残しつつ、SHECTERの7弦ギターによるヘヴィなリフに乗せた東アジア系ポップなヴォーカル・メロディ。さらには古箏や中国笛といった民族色を加えて非常に個性的なサウンドを創り上げてきた。 

このユニークな音を生み出したCRYSTAL DANCERは、ギタリスト(シンセ、プログラム、ベース等も)のDaysを中心としたバンドだ。実はそのDays、2000年代初期にはSNOWDANCEというメロディック・パワー・メタル・バンドを率いていたのだが、アルバムを残すことなく2003年には解散してしまう。徐々に音楽的志向が変化してきたDaysはこの年、どっぷりとエレクトロニカの世界に浸り、新たな方向性を模索し始めるようになった。

そして2004年、エレクトロニカとメタルを融合させた新たなバンドCRYSTAL DANCERを結成。2006年には2曲入りデビュー・シングル『Crystal Dancer ~Mairi~』を発表。この時点ではまだメタル色の強い作風であったが、翌2007年に発表したファースト・アルバム『Crystal Dimension』ではトランス要素を強く打ち出したダンサブルなエレクトロ・メタルを披露。 通常なら、ファースト・アルバムを出したその後はライブを重ねていくものだが、残念なことにほとんど行われることはなかった。二代目ヴォーカリストのA-tingはアメリカへ留学、ドラマーのFangもアメリカのMI(Musicians Institute)へ技術の向上を目指してしばし台湾を離れてしまうのだ。ようやくアルバムを完成させるも活動が思うようにならず、Daysは失意に暮れてしまったというが、気持ちを整理してしばしの休息をもうけることにする。ちなみに、このアルバムの時点で、これまでバンドにいたベーシストは脱退し不在となっているが、台湾ではつとに有名な四分衛からODが数曲で演奏しているのを始め、スクラッチやピアノで他のバンドのメンバーがゲスト参加している。それもDaysの交友関係の広さ、彼の作る音楽的魅力を示しているのかもしれない。

さて、2007年の夏からバンドを休止していたDays。この間はCRYSTAL DANCERの為の曲作りさえも行っていなかったと聞いているが、2008年にはヴォーカリストのA-tingが脱退してしまう。それから約1年をかけて10人程のヴォーカリスト候補を試し、ようやく2009年9月に新たなメンバーとしてJinが加入することになった。それと同時にバンドは再始動し、新作に向けての曲作りを開始することになる。

2009年に2曲、2010年に3曲、そして2011年に3曲と、じっくり時間をかけて曲作りを行い、今年始めにレコーディング。満を持して発表されたのがセカンド・アルバムとなる『Crystal Gravity』だ。トランスをふんだんに盛り込んだエレクトロ要素の強いダンサブルな作風だった前作。もちろん、新作もダンサブルなビートは効かせているものの、東アジア特有のポップなヴォーカル・メロディ、ヘヴィさを増したギター・リフ、そして中華民族楽器の導入という。もはや新生CRYSTAL DANCERとも言えるような新たな試みが満載の作品となっている。

よりポップになったヴォーカルは、Daysが2009年頃にJ-POPに焦点を当てて聴いていたということから、その影響が出ていると言っていた。しかし、日本特有のというより、韓国や台湾のポップスをも飲み込んだ東アジア的なメロディだと思う。今回はメロディをポップにすることにより、メタル・ファン以外からの支持も狙っているということも言っていたが、曲によってはアイドル並みのノリをみせる場面もあり、的確な所をついているように思う。

しかし、東アジア的なポップ・メロディや中華民族楽器の導入は、ただ安易に売れ線を狙ったものではない。Daysがこんなことを話してくれた。

「東洋のメタル・バンドのほとんどは西洋音楽を基盤にして作曲、または西洋の音楽家を注目させるような演奏技術を目指しています。もちろん、それが素晴らしいレベルまで、時には西洋のバンドを超える所まで到達しているバンドもいますが、つまるところ、西洋音楽の世界から影響されたものというだけなのです。我々が行いたいことは、西洋人が聴いてすぐに東洋の音楽だと認識できる音楽を作ることです。CRYSTAL DANCERの音楽は個性的であって欲しいですし、我々の音楽を聴いた時に台湾のバンドだとわかるようにしたいのです」

確かに、他にも同じようなバンドを見つけられそうな気も一瞬するものの、きちんとこのような形でコンセプトを固めているバンドも見当たらないかもしれない。個性と言えば、実はこのDaysのギター・ソロもなかなかユニークだ。シュレッド・ギターが好きだと言う彼は、Paul Gilbert、George Bells、Steve Vai、Bucketheadといった凄腕達から彼らが個々に得意とするスキッピング、スウィープ、ワーミー、タッピング、スイッチング奏法といった技を学び、それを自分なりに融合させて独自の個性的なプレイを生み出している。

また、アルバムには日本人の心をくすぐる「Shinobi」なる怪しいタイトルの曲もあるが、想像通り、忍者をテーマにしている。歌の内容は、素性が明らかにされることのない神秘的な存在の忍者。一般の人が描くそのイメージは真剣で無口、物静か、そして冷酷。しかし、それはあくまでも表向きだけのこと。ここでは、完璧なる任務遂行と冷徹な表情の下に隠れている、彼らの心の内で制御された複雑な感情を述べているという。

ついでに、古箏と中国笛が悲しく舞う美しいバラード「離殤」も今回のアルバムでは聴き所のひとつ。こちらは、君主の命令で家族のもとを離れて戦場へ行かされる男達がいた昔の話。家で取り残された妻は来る日も来る日も夫の身を案じている。過ぎ行く時間、日ごとに募る不安と会いたいという切ない気持ち。そんな妻ができる唯一のことは楽器を持ってその押さえ切れない悲しみを歌うのみ。という泣かせる話で胸を打たれてしまう。

本作でCRYSTAL DANCERは台湾音楽界の重要バンドのひとつとなったと私は思う。是非、心をオープンにして彼らの音に接してみて欲しい。新しい世界が開けるはず。

なお、『Crystal Gravity』発表後、日本人のキーボーディストが正式にメンバーとなったと聞いているが、今後の予定として、来日も視野に入れているようだ。
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