WYNKEN DELIRIUM “Opinions”
WYNKEN DELIRIUM “Opinions”
販売価格: 1,600円(税込)
商品詳細
東南アジア圏のバンド達を巻き込んで暴れる台風の目、マレーシアのヌサンタラ・メタル、WYNKEN DELIRIUMが放つ第2弾。スラッジ色の強いメタルとオルタナティヴのヘヴィさとグルーヴ感に怪奇と神秘の東南アジア伝統音楽を練り合わせたらとんでもなく怪しいサウンドが出来ちゃいました。随所で多用される金属琴Saron、竹琴Rindik、さらには口琴のGenggong、スレンドロ・スケールが泥臭いうねりと共に生み出す摩訶不思議な世界。実験に実験を繰り返し、ジャワ、バリ、スンダのガムランを組み合わせたり、インドネシアとマレーシアの伝統音楽を融合してしまうという離れ業も華麗に披露。これは、ロック、メタル・サイドから捉えた東南アジア伝統音楽文化の現在進行形だ!
2012年リリース。
デジパック仕様。
収録曲
01.Kutut Manggung Kudha Nyongklang 1:45
02.I Don't Know Why You Like Me But It's All Right 4:59
03.Very Able Troopers 3:17
04.Upacara Keperluan Umum 3:44
05.Growe 4:06
06.Misfortune Cookie 1:35
07.Operation Ginger 5:23
08.Please Sign Up 4:08
09.Five Shops 3:54
10.Ujung Sedo 2:58
11.National Hobby 3:31
12.Layu Sebelum Berkembang 3:32
以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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フォーク/ペイガン/ヴァイキング・メタルといったところでは、地域性や民族色を色濃く打ち出して自己を主張したり、他との差別化を図ったりするバンドが多く、聴き手を楽しませ続けてくれている。ここ数年はロシアも熱いが、FINTROLL、KORPIKLAANI、EQUILIBRIUM、CRUACHAN、ELUVEITIE、ELVENKING、FALCONER、FOLKEARTH等々、やはり北欧とヨーロッパから現れてくるイメージが強い。日本にもアイリッシュ・フォークを取り入れたBELLFASTが存在するし、中国には遊牧民族の文化を取り入れたペイガン・メタル、TENGGER CAVALRYがいるとはいえ、まだまだその数は少ないように見えるかもしれない。
そこで、今回は皆さんがご存知のフォーク/ペイガン/ヴァイキング・メタルが持つ、勇壮さや、聴いているだけで騒ぎたくなるノリとは違うものの、地域性を強烈に押し出しているアジア圏のバンドをひとつご紹介しよう。
それはマレーシアはジョホールのWYNKEN DELIRIUM。このなんとも不思議なバンド名は、フランスの詩人Arthur Rimbaudと、アメリカの作家Eugene Fieldの著作から引っ張ってきて組み合わせたものということだが、そう言われると少し文学的な響きも感じられなくもない。なんとなく心の片隅に引っかかるバンド名なので、ひょっとしたらその名を聞いたことがある人もいるのではないだろうか。主に東南アジア各地のバンドを巻き込んで長年に渡り精力的にツアーを重ねているし、実は日本のMYPROOFとも共演している。
2004年頃から母体となるバンドは存在していたが、2006年に新たなる方向性を決定し、バンド名をWYNKEN DELIRIUMと改める。ここで彼らが目指したのがスラギッシュでグルーヴィな西洋のメタルと東南アジアならでは文化、伝統様式の融合だった。アルバムの制作に着手して約3年後の2009年、ついに『The Alchemy Of World』が発表される。しかし、CD-Rという形式、自主制作という部分から、ここ日本やヨーロッパ方面にはあまり届くことはなかったとは思うが、積極的な東南アジア圏のツアーと、その地域に根ざした独特のサウンドの衝撃によってWYNKEN DELIRIUMの名は徐々に広まっていくようになる。
その多くの経験を通して制作されたのが、今年発表された『Opinons』というセカンド・アルバム。今作は、ジャケットの作りはもとより、世界にその名を知られたSheila MajidやZainal Abidinの作品を担当した敏腕エンジニアがミキシングを担当しているだけあって、よりクリアな音像になっている。とはいえ、オルタナ、スラッジ・メタル特有の泥臭さいグルーヴが支配するという気持ちの良い矛盾。
しかし、今回特筆すべきはその民族色の強化だ。ただ既存のフレーズを導入するだけではなく、長い時間をかけて研究と実験を重ねた成果が見事に表現されている。彼らが参照している地域はマレーシア、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、タイ、カンボジア、ベトナム等の文化だが、今回メインとなるのはインドネシアとマレーシアの伝統音楽の要素だ。インドネシアのジャワで行われる劇のオープニングで歌われるという「Kutut Manggung Kudha Nyongklang」から始まり、泥臭いオルタナ、スラッジ・メタルのグルーヴに、ガムランに使用される金属琴Saronや竹琴Rindik、さらには口琴のGenggongを取り入れた楽曲が連なる。もちろん、それだけではなく、ガムラン特有のスレンドロ・スケールを大胆に持ち込んだり、ジャワ、バリ、スンダといった各地方のガムランを組み合わせて怪しくヘヴィで神秘的な雰囲気の曲も作り上げる。さらにはインドネシアとマレーシアの伝統音楽を融合してしまうという実験的な曲もある。一瞬強引と思われるかもしれないが、世界の伝統音楽も結局は交配を重ねて発展してきたことを鑑みれば、これはロック/メタル側から見た現在進行形の東南アジアの伝統音楽と言ってもいいだろう。
WYNKEN DELIRIUMは今後も様々な民族楽器をその楽曲に取り入れていく為にいくつもの新たな楽器の演奏方法を習得中だという。彼らの基本にあるのは西洋のロック/メタルに代表される激しいリズムとグルーヴと東南アジア圏の伝統文化、様式の融合だ。とは言っても細かな特定ジャンルの枠内で曲作りをするつもりはまったくないようだ。常にあらゆるジャンルに耳を傾け、刺激を受けたものを融合し、実験を重ねながらWYNKEN DELIRIUMのフィルターを通して吐き出していく。そして自分たちが面白いと思えるならば、危険を冒しても挑戦をしていくと話してくれた。
おそらく、多くのフォーク/ペイガン系のバンドを聴いてきたマニアもこのWYNKEN DELIRIUMの生み出す音は新鮮に聞こえるだろう。世界は広くて深い。そして伝統や民族について今一度考えさせられてしまう。そんなバンドだ。
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2012年リリース。
デジパック仕様。
収録曲
01.Kutut Manggung Kudha Nyongklang 1:45
02.I Don't Know Why You Like Me But It's All Right 4:59
03.Very Able Troopers 3:17
04.Upacara Keperluan Umum 3:44
05.Growe 4:06
06.Misfortune Cookie 1:35
07.Operation Ginger 5:23
08.Please Sign Up 4:08
09.Five Shops 3:54
10.Ujung Sedo 2:58
11.National Hobby 3:31
12.Layu Sebelum Berkembang 3:32
以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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フォーク/ペイガン/ヴァイキング・メタルといったところでは、地域性や民族色を色濃く打ち出して自己を主張したり、他との差別化を図ったりするバンドが多く、聴き手を楽しませ続けてくれている。ここ数年はロシアも熱いが、FINTROLL、KORPIKLAANI、EQUILIBRIUM、CRUACHAN、ELUVEITIE、ELVENKING、FALCONER、FOLKEARTH等々、やはり北欧とヨーロッパから現れてくるイメージが強い。日本にもアイリッシュ・フォークを取り入れたBELLFASTが存在するし、中国には遊牧民族の文化を取り入れたペイガン・メタル、TENGGER CAVALRYがいるとはいえ、まだまだその数は少ないように見えるかもしれない。
そこで、今回は皆さんがご存知のフォーク/ペイガン/ヴァイキング・メタルが持つ、勇壮さや、聴いているだけで騒ぎたくなるノリとは違うものの、地域性を強烈に押し出しているアジア圏のバンドをひとつご紹介しよう。
それはマレーシアはジョホールのWYNKEN DELIRIUM。このなんとも不思議なバンド名は、フランスの詩人Arthur Rimbaudと、アメリカの作家Eugene Fieldの著作から引っ張ってきて組み合わせたものということだが、そう言われると少し文学的な響きも感じられなくもない。なんとなく心の片隅に引っかかるバンド名なので、ひょっとしたらその名を聞いたことがある人もいるのではないだろうか。主に東南アジア各地のバンドを巻き込んで長年に渡り精力的にツアーを重ねているし、実は日本のMYPROOFとも共演している。
2004年頃から母体となるバンドは存在していたが、2006年に新たなる方向性を決定し、バンド名をWYNKEN DELIRIUMと改める。ここで彼らが目指したのがスラギッシュでグルーヴィな西洋のメタルと東南アジアならでは文化、伝統様式の融合だった。アルバムの制作に着手して約3年後の2009年、ついに『The Alchemy Of World』が発表される。しかし、CD-Rという形式、自主制作という部分から、ここ日本やヨーロッパ方面にはあまり届くことはなかったとは思うが、積極的な東南アジア圏のツアーと、その地域に根ざした独特のサウンドの衝撃によってWYNKEN DELIRIUMの名は徐々に広まっていくようになる。
その多くの経験を通して制作されたのが、今年発表された『Opinons』というセカンド・アルバム。今作は、ジャケットの作りはもとより、世界にその名を知られたSheila MajidやZainal Abidinの作品を担当した敏腕エンジニアがミキシングを担当しているだけあって、よりクリアな音像になっている。とはいえ、オルタナ、スラッジ・メタル特有の泥臭さいグルーヴが支配するという気持ちの良い矛盾。
しかし、今回特筆すべきはその民族色の強化だ。ただ既存のフレーズを導入するだけではなく、長い時間をかけて研究と実験を重ねた成果が見事に表現されている。彼らが参照している地域はマレーシア、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、タイ、カンボジア、ベトナム等の文化だが、今回メインとなるのはインドネシアとマレーシアの伝統音楽の要素だ。インドネシアのジャワで行われる劇のオープニングで歌われるという「Kutut Manggung Kudha Nyongklang」から始まり、泥臭いオルタナ、スラッジ・メタルのグルーヴに、ガムランに使用される金属琴Saronや竹琴Rindik、さらには口琴のGenggongを取り入れた楽曲が連なる。もちろん、それだけではなく、ガムラン特有のスレンドロ・スケールを大胆に持ち込んだり、ジャワ、バリ、スンダといった各地方のガムランを組み合わせて怪しくヘヴィで神秘的な雰囲気の曲も作り上げる。さらにはインドネシアとマレーシアの伝統音楽を融合してしまうという実験的な曲もある。一瞬強引と思われるかもしれないが、世界の伝統音楽も結局は交配を重ねて発展してきたことを鑑みれば、これはロック/メタル側から見た現在進行形の東南アジアの伝統音楽と言ってもいいだろう。
WYNKEN DELIRIUMは今後も様々な民族楽器をその楽曲に取り入れていく為にいくつもの新たな楽器の演奏方法を習得中だという。彼らの基本にあるのは西洋のロック/メタルに代表される激しいリズムとグルーヴと東南アジア圏の伝統文化、様式の融合だ。とは言っても細かな特定ジャンルの枠内で曲作りをするつもりはまったくないようだ。常にあらゆるジャンルに耳を傾け、刺激を受けたものを融合し、実験を重ねながらWYNKEN DELIRIUMのフィルターを通して吐き出していく。そして自分たちが面白いと思えるならば、危険を冒しても挑戦をしていくと話してくれた。
おそらく、多くのフォーク/ペイガン系のバンドを聴いてきたマニアもこのWYNKEN DELIRIUMの生み出す音は新鮮に聞こえるだろう。世界は広くて深い。そして伝統や民族について今一度考えさせられてしまう。そんなバンドだ。
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